安定稼働する3Dワークステーション(や自作PC)を予算内で構築するノウハウ


有り難い事に3Dのお仕事をメインにしている方々から3D向けワークステーションの作成を頼まれる事が多々あり、かなりの数を納品してきました。本投稿では高品質なパーツを使って予算内でワークステーション/自作PCを作るノウハウを公開します。安定稼働や故障率を下げるために、普段論じられる事の少ない部品であるFAN等についても今までの経験に基づいた結果を載せました。

本投稿の主なターゲットは個人で3DCGをやっている学生さんや、3Dワークステーションの導入が必要なネットワーク管理者の方です。もちろんビデオカード以外のノウハウは一般的な自作PCにも共通するので、PC自作が趣味の方も対象です。

まず、3D向けワークステーション作成時に求められていた十か条は下記のとおりです。1番、2番、10番以外はPCの自作でも求められることですね。

  1. OpenGLの性能(作業時のレスポンスに直結する)
  2. レンダリング性能(CPU性能)
  3. メモリ帯域とメモリ容量
  4. 安定性(途中でフリーズしたりしない事)
  5. 故障率の低さ
  6. 静音性(五月蠅いと気が散るので)
  7. データロストの危険性を極力排除する
  8. 電力効率(今までは2の次だったが、80Plus電源の浸透で求められるようになった)
  9. 値段
  10. 保守(壊れた時の連絡先があり、対応してもらえる事)

ここで、1番にはビデオカードの性能ではなく、OpenGLの性能と記載したことから、お詳しい方は気付いたと思います。ある一定ランク以上の3Dソフトを利用する場合には、GeForceの上位モデルを買ってもそこまでのパフォーマンスの改善は見込めません(QuadroとGeForceの違い (菱洋エレクトロ株式会社))。3DCGを描くにあたってはQuadroの下位モデルとGeForceの最上位モデルを比較すると、Quadroの下位モデルの方が高性能です。

実際に利用するソフトウェアとして想定しているのは、下記のような実際の商用3D作品を制作する上で利用されているソフトウェア類です。

3Dワークステーション(や自作PC)を構築する際に気を付けたりしている点を下記にまとめます。予算内で最大のパフォーマンスを出すために、一部で妥協する事も有りますが、安定性だけは譲れない為に、『MBが光る』とか、『MB上の機能がてんこ盛り』等での選択は一切行わず、『過去の実績に基づいた安定稼働する組合せを予算内で選ぶ』以外のことは静音性と消費電力ぐらいしか考慮していません。なお、CPUはチップセットとMBの安定性を理由にINTEL一択としています(AMD向けのハイエンドマザーは以前はTYANが出していましたが、最近は出してくれないので、AMDのCPUを使ってワークステーションを自作するのに耐えうる良いMBが無いと言う理由です)。

項目 コメント 想定金額
CPU レンダリングの時間短縮に必須。HT(hyper threading)はあった方が良いです。ソケットタイプにはWS用のLGA2011と、一般向けのLGA1150があります。性能と言う観点からみると、主な差はメモリ帯域でLGA1150のデュアルチャネルに対してLGA2011のクアッドチャネルは倍の帯域幅があります。WSの注文を受ける際にソケットタイプで相談されるのは主にメモリ帯域周りとSLI周りが多かったと記憶しています(結局、将来的にSLIにすると言っていても、上位モデルのQuadroを買ってしまうので、SLI構成にする事は無かったようですが・・・)個人的な感想ですが、LGA2011は数が出ない為か、MBメーカーがBIOSのアップデートで後付で安定性を担保していたり、CPUの初期不良率が一般向けCPU(LGA1150等)に比べて高かったりと、問題が出る確率が高かったです。しかし、初期構築後にエージングを済ませ、安定動作まで漕ぎ着ければ安定性、パフォーマンス共に優秀でした。 3万前後
メモリ レンダリングで長時間メモリに負荷をかける為、品質重視でメモリを選択する。OC(オーバークロック)用のメモリは購入せず、品質、容量、価格の面から選択する。3年保証、5年保証、永久保証が付いている事の多いkingstonsanmaxtrancsendシー・エフ・デー販売取扱品(左記に比べ、不良率が多少高いがメーカー保障で対応できる)辺りを選択する事が多かったですね。 2~3万
マザーボード SUPERMICRO、ASUS、MSI、GIGABYTE辺りが無難。SUPERMICROは値段は高いがサーバー用途、WS用途で実績有り。ゴテゴテとMB上に余計なチップ(例えば無線LANや、専用のUSB3.0チップ、専用のSATAチップ)を載せているものは値段が上がるついでに故障部位が増えるので選択肢から外していました。MBは、single CPUの場合にはASUS、dual CPUの場合にはSUPERMICROとする事が多く、最近ではマルチコア化のお陰でCPU1つで十分な性能が出る事から、single CPU(ASUS製MB)を出すことが多くなっていました。 1万~3万(SUPERMICRO以外)6万~10万(SUPERMICRO)
ビデオカード OpenGL対応のソフトを使う場合にはQuadroを選択しておけば3D関係のソフトウェアとの問題に悩まされることは無いです。3D関係の授業をしている学校で導入されているのも殆どQuadroである事から、実績も十分と判断できます。Quadro600番台でも文句を言われたことはありません。凄い作品を作れる人でも2000番台でも上手くやれば十分いけると言っていたことから、それ以上のランクを選ぶ際には、予算ややりたい事と相談ですね。自作PCでゲームをメインにする場合には、RadeonやGeforceのお好きなモデルを選択してください。株取引や一般的な用途であれば、CPU付属のGMA4000を使えばよいかと。 2万~6万
CPUクーラー レンダリング時にCPU負荷100%が数時間続くので、リテールクーラーよりも、高性能なCPUクーラーをチョイスすると吉。ケース背面のFANと合わせて、片方のFANが壊れても、もう片方のFANでカバーできるようにケースが許す範囲内で大型のCPUクーラーを積むことが多かったです。なお、CPUファンを交換可能な場合には、SANYO製に付け替えていました。 3千~5千円
ケース お好みで。ANTECやクーラーマスターが無難なのでしょうか。CPUに近い場所にある排気FANが1つ以上あるケースだと、CPUかケースFANが1つ壊れた場合でも、即障害に繋がる危険性を減らせたり出来るので、外見だけではなく、内部の風の流れにも着目して選んでいました。 5千~3万
電源 評価の高いメーカーを選択する。昔はETASISやZIPPY辺りを買っておけばよかったので楽だったのですが、最近は自作ブームで光っていたり、プラグインタイプだったりと、堅実な電源が減ってきた感があります。製品は沢山あるものの、ワークステーション用には鉄板と言える選択肢がほとんどないのでCorsairやEnermax、DELTAと言ったメーカーの1万~2万円台の電源から選択していました。なお、80Plus GoldかPlatinum取得電源はある一定の判断基準になります。プラグインタイプは故障部位が増えるだけなので3D向けワークステーション作成時には好んで選択する事はありませんでした。エアフローに関しては、タイラップでケーブルを綺麗に束ねれば良いだけなのでプラグインタイプを選択する必要が無いと言うのが理由です。 1万~2万
HDD/SSD 仕事用のPCの故障率を高くするだけにはいかないので、MTBFが100時間以上あり7200回転の0S03663等のメーカーが高品質をうたっているHDDを選択していました。また、正直なところデザイナーからの依頼でSSDを使ったことはまだありません。自作PCとしての要望でならSSDを要望される事は多々あり、東芝、Seagate、INTEL辺りから選んでいました。大事なデータの保存先には冗長構成のNASを別途納品したりしていました(選択基準構築事例)。 2万
FAN ケースファンには大抵の場合には山洋電気製(SANYO)を使っています。SANYOのFANは各種高品質なサーバのFANに必ずと言っていいほど使われており、数千万以上するハイエンドストレージ装置(SAN)に使われているのもSANYOのFANが使われている事が多いです。他にはNidec(日本電産)等も見かけますね。ちなみに今まで出荷したPCでFANが壊れたものはSANYO以外のケース付属のFANばかりです(大抵、FAN中央部のベアリング部分の油が垂れてきて壊れていた)。逆にSANYO製では一度もFANの故障で連絡を受けた事はありません(FANの寿命の前にスペック上厳しくなり、買い替えをする時期が来てしまうようです。Pentium4全盛の時代からWSを出していたので、当たり前と言えば当たり前ですが)。FANについては高速電脳の記事が上手くまとまっています。 2千~3千
マウス、キーボード 使いまわしである事が多い。 別途
タブレット 使いまわしである事が多い。ワコム製品一択とのこと。 別途
OS Windows7 Professional。Professionalを選ぶ意味は外出先からVPN経由でWSにリモートデスクトップでアクセスし、時間のかかるレンダリングを実行したり、進捗状況を確認出来る為。Homeエディションだとリモートデスクトップが使えないが、特に要件が無ければHomeで出したこともある。 1万~2万
UPS 停電時に、作品を保存し、安全にOSをシャットダウンする為に設置。OSシャットダウンの為に、WS/PC本体とモニタの両方をUPSから電源供給している。最近のPC電源はまず間違いなくPFC対応なので、正弦波のUPSを選択しています。 別途(2万)
モニタ メインモニタにはNECのハイエンドモデルが人気がある模様です。 別途

次に、構築事例です。CPUは3.7Ghz×4コア近辺のもの、メモリは16G、SSD256G、Quadro K2000もしくはQuadro K2200構築した場合です。ほぼ同スペックのHP製ワークステーションを比較用に載せましたが、基本構成のみだと性能、値段共に優れているものの、メモリを16Gにカスタマイズしているため、HP製のWSには不利な結果となっています。

項目 LGA1150 LGA2011 HP
CPU Core i7 4790K 4万 Core i7-4820K 3万3千 E5-1620v2
メモリ sanmax 2万 sanmax 2万 純正
マザーボード H97-PRO 1万 Rampage IV GENE 2万8千 純正
ビデオカード Quadro K2200 6万2千 Quadro K2000(K2200は出たばかりでオプションになかった)
CPUクーラー KATANA4 4千 CRYORIG 6千 純正
ケース お好みで 1万 純正
電源 ERX730AWT 1万3千円 純正
HDD/SSD 東芝 1万4千 純正
OS Windows7 Professional x64 1万6千 Windows7 Professional x64
合計金額 18万8千程度 19万8千程度 36万4500円
コメント CPUが汎用的な製品かつ、最新のコアを利用出来る為にCPUの演算速度が速く、トータルでの値段も低いです。メーカー製のWSと比べて、メモリを大量に積んでも実費しかかからない分、トータルで安上がりとなる。CPUやケースで妥協すれば15万でQuadro2200をつめる。 CPUにハイエンド向けのLGA2011を利用する為、メモリ帯域面でLGA1150の2倍の性能を発揮します。他はLGA1150と同様です。LGA2011の場合にはCPUファンは別売。INTEL純正で問題なかったが、CRYORIG製の新製品があったのCRYORIG製を記載。※LGA2011は構築難易度が高いが、その分メーカー製WSよりも高性能なマシンを安価に自作できるメリットがあります。※BIOSアップデートが必要だったりした場合に、周りにそのCPUを持っている人がいなくてBIOSアップデートが出来ない状態になる可能性もある。

※MBを選べばメモリは最大で64Gまで載せられる。その場合、8G×8枚の構成になるので、低品質なメモリは殆ど動かない。最低でもsanmaxやkingston等のメモリを選ぶ必要がある。メモリを大量に乗せた後は、memtestで負荷テストを行う事をお勧めします。

メーカー製なので、安心して購入できますが、基本構成からカスタマイズすると値段が跳ね上がる。特にメモリやビデオカードなどのスペックを上げたい部分で、純正品の値段が高く感じます。なお、基本構成のまま購入し、自己責任でメモリを増設する手もあります。

メーカー製のワークステーションは高品質かつ静音性にすぐれ、非常に使いやすいのですが、ネックは標準構成からメモリ容量やCPUを変更すると、一気に値段が上がってしまいます。しかし、大量導入する場合などには、サポートを全部メーカー任せに出来る為、安心感や責任と言った意味で適正な値段だと考えます。個人用途で使用するのならば、ワークステーションの自作は有力な選択肢の一つになると思います。

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