QNAPのNAS TS-653 Proのファームウェアは基板上に取り付けられたUSBディスクに入っています。そのUSBディスクにはQNAP NASのOS本体が入っています。
USBディスク上のQNAPのOSイメージを誤ってパーティションごと削除してしまった場合の復旧手順をまとめました。
本解説はTS-653 Pro(ファームウェアはTS-X53というファイル名)を例に書いていますが、intelやAMDを用いた他のQNAPのファームウェアリカバリにも利用できると思います。
QNAP NASが起動しないパターン
ブートローダがまだ残っているか否かで、壊れ方も大きく2パターンに分かれます。
- Linuxイメージを読みに行くが、「 Booting the kernel. 」の先に進めなくなるパターン(ファームウェアのアップグレード失敗や、間違って違う型番のファームウェアで強引にアップデートした場合等)
- QNAP OSが格納されたUSBディスクのパーティション、ブートローダを削除したことで、BIOSがブートローダを読めずに、「ブートできるメディアを入れてください」的なメッセージで止まるパターン
結局のところ、どちらのパターンでもNASが利用できなくなっていることには変わりないのですが、2番はOS格納先のパーティションすらも削除しているので、より深刻な状態となります。
ご参考:どうやってQNAP NASを壊したか
色々なサイトで紹介されている以下作業をして壊しました。
cp -f /tmp/dom.img /dev/sdb
実施中に「これ、パーティションごと壊れるんじゃないか?」と疑いながら実行したところ、案の定壊れました。多分、利用するイメージファイルか手順が間違っていたのでしょう。

QNAP NASの起動イメージが完全に壊れた状態からの復旧方法
復旧方法は以下の流れになります。
- 作業中にHDD上のユーザーデータを削除しないよう、HDDを全て抜く。(HDDの鍵が無い場合は、トレイを購入するとくっついてきます。)
- 起動可能なUSBメモリの作成と、復旧用イメージの準備
- QNAP NAS をClonezillaのUSBメモリからブートする
- QNAP NASのUSBディスクに起動イメージを描き戻す
- 「F_」イメージ起動後、QNAP NASのファームウェアを最新版に入れ替える
- QNAP QfinderでNASを見つけて再セットアップ
1.作業中にHDD上のユーザーデータを削除しないよう、HDDを全て抜く。
作業中に誤ってHDDのデータを削除してしまうと、大事なユーザーデータを失ってしまう可能性があります。
なお、QNAP NASリカバリ後、HDDを再接続することで、故障する前のRAID状態で、該当ディスクを認識してくれます。(故障の仕方によるので、データの復旧を保証するものではありません)
2.起動可能なUSBメモリの作成と復旧用イメージの準備
なんでも良いので、Linuxブートするメディアを作成します。CDROMブートするLinuxでも、USBブートするLinuxでも構いません。
ddコマンドでイメージをQNAPの起動用USBメディアに上書きしてパーティションやアップデート用コマンドを復旧するので、イメージをコピーしやすいUSBメモリを推奨します。8GB以上のUSBメモリであることが必須条件です。
USBメモリを用意したらUSBブート可能なUSBメモリを作成するためのソフトであるRufusと、RufusでUSBメモリに焼き付けるイメージであるClonezillaをダウンロードします。
- Rufus 最新版
- Clonezilla最新版
- QNAP NASのfullimage (最新版ファームウェアとは違います)
- QNAP NAS 該当機種の最新版ファームウェア
ダウンロードしたRufusを実行し、以下のようにオプション指定します。

ブートの種類でダウンロードしたclonezillaを指定します。
次に、QNAP NASのfullimageをダウンロードします。間違えやすいのですが、tsd以下のfullimageをダウンロードしてください。間違って、QNAPのサポートページから最新版イメージをダウンロードしても、パーティションイメージは含まれていません。

ダウンロードしたイメージを以下図のようにclonezillaをインストールしたUSBメモリのルートディレクトリにコピーします。

※「F_」で始まるイメージがフルイメージです。これをddで書き戻すことでパーティションも復活可能です。「F_」で始まらないイメージは、QNAP NAS専用の/etc/init.d/update.shシェルの引数で渡す為のイメージファイルです。ddで間違って指定しても、意味がない(というかNASが起動しなくなる)だけです。ちなみに、ファイルサイズも2倍以上違いますね。
3.QNAP NAS をClonezillaのUSBメモリからブートする
USBメモリの準備が完了したら、QNAP NASにキーボード、モニタを接続し、QNAP NASのUSBポートに挿して、QNAP NASの電源を入れます。
QNAP NASの起動画面でF11キー(もしくはDELキー)を押下し、ブートするメディアをClonezillaの入ったUSBメモリに指定してブートします。
4.QNAP NASのUSBディスクに起動イメージを描き戻す
Clonezillaからブートした後、以下の通り作業する。
fdiskコマンドで、QNAP NASのUSBディスクを探す。
今回作成したclonezillaが入っているUSBメモリ購入したブランド名が出るので、それとは別のディスクが対象となる。
sudo fdisk -l /dev/sda
sudo fdisk -l /dev/sdb
cdコマンドでF_TS-X53_20140916-1.2.8.imgがある場所へ移動。
場所がわからなければ、find / -name *.imgで場所を検索。
sudo dd if=F_TS-X53_20140916-1.2.8.img of=/dev/sda # fdiskの結果、sdaがQNAPの起動ディスクだった場合
sudo reboot
※シャットダウン処理が実行された後、USBメモリを抜いてください。
5.「F_」イメージ起動後、QNAP NASのファームウェアを最新版に入れ替える
「F_」イメージで起動した状態だと、背面のファンの回転が止まったり動いたりしたり、ネットワーク接続が出来ない状態だったりする。
しかし、ddコマンドで「F_」イメージを書き込んだため、QNAP NASのディスク構成が戻り、かつファームウェアアップデート用コマンドも利用可能な状態となっている。
先ほどclonezillaを入れたUSBメモリに、QNAP NASの最新版ファームウェアをコピーします。

QNAP NASを「F_」イメージで起動した状態で、QNAP NASのUSBポートにUSBメモリを挿し、該当ファームウェアを対象として以下コマンドを実行後、QNAP NASを再起動します。
# cdコマンドでTS-X53_20191206-4.4.1.1146.imgがある場所へ移動。
/etc/init.d/update.sh TS-X53_20191206-4.4.1.1146.img
reboot
※シャットダウン処理が実行された後、USBメモリを抜いてください。
6.QNAP QfinderでNASを見つけて再セットアップ
ここから先は簡単です。QNAP NAS購入後と同じ状態でQfinderでQNAP NASを見つけます。。

該当NASを選択して、管理画面を開き、セットアップを行ってください。


一度、QNAP NASにログイン出来たら、一度QNAP NASをシャットダウンしてください。QNAP NASが完全にシャットダウンされた後、作業中に誤って削除しないように外しておいたHDDを全て元に戻します。
後は、復旧のため、NASを再設定して完了です。
最後に
QNAP NASは非常に安定稼働しますが、ファームウェアを壊してしまった場合の復旧はかなり大変です。ファームウェアアップデート中の停電等で万が一、NASを壊してしまった場合の一助になればと思い、本記事を書きました。
成功報告などがあれば、コメントいただけると幸甚です。
また、リカバリしたQNAPのNASはSMRのHDD4台でRAID5運用しています。そのディスク拡張例を「QNAP NAS RAID5ボリュームへHDD追加して容量拡張する(SMR HDDでの実績)」で取り上げていますので、あわせてご覧ください。
サーバーが故障してしまい、OEMの互換機が入手できたのでこちらの資料を参考にQNAPのファームウェアに書き換えて、最新環境で運用できるようになりました。
ありがとうございました!!!
なお、clonezillaで起動した場合、デバイスは自動でマウントされており、テストファームウェアで再起動後はUSBは手動でマウントしなければならず、LINUX初心者としてはなかなかハードルが高かったです。
また、最後の最新ファームへの書き換えがどうしてもエラーになって諦めかけていましたが、最新のQFINDERから普通にアップデートできました。
なので、F_のシステムイメージまで書き込めたら、さっさとLANに接続すればもっと簡単に最新FWに更新できそうです。
故障機 TS-653PRO
代替機 ALEXON CLOUD SHELTER CS-5000 NAS-653-G PRO
HDDを入れ替えたら無事に全データサルベージできました。
感謝
OEM機の書き換え成功おめでとうございます。
また、ノウハウを残していただきありがとうございます。
記事を参考にさせていただき、職場のお下がり互換機を無事にQNAP化できました。
導入機:ALEXON CLOUD SHELTER 420 NAS-469G
※clonezillaでの起動時に参考Link最下段と同じくキーボードが認識されないエラーに悩みましたが、
dsl-4.4.10-initrdのimgをrufus-3.13で書き込み、DSLのboot時にF2オプション→dsl2を選択(CUIで起動)してコマンドプロンプトにたどり着きました。
その後はlasas様に情報提供いただいたとおりF_*.imgをddで書き込み、reboot後はikapontan様の情報に従ってQfinderでアップデート完了できました。
Linuxはずいぶん以前に、Webの情報の見様見真似で、FreeBSDで自宅サーバーを作って以来でしたので苦戦してしまいましたが、リンクも含め非常に有り難い情報提供をいただき、なんとか完了できました。心から御礼申し上げます。ありがとうございました。
お役に立てたようで幸甚です。QNAPのNASは使い勝手が良いので是非有効活用してください。
このホームページのおかげさまで、無事ALEXON CS-2000 NAS-453-G Proの書き換えに成功しました
Linux初心者でしたのでsudo suにしたあとは手順通りにできました
私の場合もテスト用のイメージを書き込んだあとはQfinderProでバージョンアップ可能でした
大変有用な情報提供ありがとうございました
成功事例の書き込みありがとうございます。
問題なくQNAP製NASのファームウェア書き換えに成功したようで何よりです。
ALEXON製のNASはヤフオクで安価で売られていますので、コスパが高いですよね。